がりがりボードゲームおかわり

ボードゲームに関してがメインです。その他雑記。

「コードネーム」から「デクリプト」への変化と深化

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●タイトル:デクリプト

●デザイナー:トーマス・ダゲネイズ・レスペランス

●発売:2017年

●ルール:https://bodoge.hoobby.net/games/decrypto


 

今回は、先日アップしたオールタイムマイベストボードゲーム第1位に選出させていただいた「デクリプト」に関してです。

デクリプトはチームに分かれてプレーする、所謂伝達系コミュニケーションゲームなのですが、プレイ感は同じく伝達系コミュニケーションゲームの「コードネーム」と似ています。今回はコミュニケーションゲームの比較から、その変化・深化を読み取りその魅力に迫りたいと思います。

 

■コミュニケーションゲームとは?

そもそもコミュニケーションゲームとはなんでしょうか?

世の中でコミュニケーションゲームと呼ばれているものを大きく定義すると「人に正しく伝えること、人が伝えたいことを正しくくみ取ること」をテーマにしたゲームと言えると思います。

では、コミュニケーションゲームはそこからどのように細分化されるのでしょうか。

コミュニケーションゲームに関して分析してみましょう。

 

■コミュニケーションゲームのメカニクス

コミュニケーションゲームは、大きく分類すると、下記の6パターンが組み合わさってできていると考えられます。

A:コミュニケーションに制限を設ける(例:ボブジテン)

B:言語以外のコミュニケーション手段を使用させる(例:ピクテル ピクチャーズ、コンセプト、はぁって言うゲーム)

C:「嘘をつく」「嘘を見破る」をさせる(例:人狼、タイムボム、ファブフィブ)

D:コミュニケーションを活発にさせる(例:ガムトーク、黄金体験)

E:各々の中にある共通認識のすり合わせをさせる連想系(例:コードネーム、ゲスクラブ、Ito、ジャストワン)

F:連想系の中でもさらに、伝え方の強弱を調整させる→伝えすぎないことを強要させる(例:ディクシット)

この中でもFメカニクスゲームとしてのジレンマが発生しやすく非常に優秀で、最近発売された「メイメイ」という、”物にそれっぽい名前を付けるボードゲーム”にも採用されています。

ディクシットをプレイされたことがある方は、その優秀さが伝わるのではないでしょうか?

そして、「デクリプト」もまさにこのFメカニクスを採用した作品であります。

ここで、さらにFのメカニズムのゲームを分析してみましょう。

 

■「ディクシット」「デクリプト」の比較

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●タイトル:ディクシット

●デザイナー:ジャン=ルイ・ルビラ

●発売:2008年

●ルール:https://bodoge.hoobby.net/games/dixit

 

Fメカニクスが採用されている「ディクシット」「デクリプト」の特徴(差)を上げていきましょう。

〇陣営

ディクシット:個人戦(自分 対 他)

デクリプト:チーム戦(自分チーム 対 相手チーム)

〇連想の仕方

ディクシット:絵→ワード

デクリプト:ワード→ワード

★ディクシットは「絵にタイトルをつける」という創作性が魅力

〇コミュニケーションの方向

ディクシット:出題者→受け手

デクリプト:出題者から相手チームと味方へ同時

★デクリプトは一つの出題で敵と味方に同時に情報発信

〇ジレンマの発生の仕方

ディクシット:受け手全員には伝わらないように調整(ハッキリと伝えすぎない)

デクリプト:お題が見えてる味方だけに伝わってそうじゃない相手チームには伝えない(受け手の情報量が「相手チーム」と「味方」とで不均等なことを考慮したうえで出題する)

★デクリプトはただ強弱を調整するのではなく、受け手の情報量差を活用するという複雑性

 

上記の通り、デクリプトはチーム戦を採用したことにより求められるコミュニケーション(伝え方・くみ取り方)が高度化したと考えられます。

続いて、同じくチーム戦が採用されたコードネームとの比較です。

 

■「コードネーム」「デクリプト」の比較

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●タイトル:コードネーム

●デザイナー:ヴラーダ・フヴァチル

●発売:2016年

●ルール:https://bodoge.hoobby.net/games/codenames

 

続いて、同じくワード→ワードの連想系であり、チーム戦でもある「コードネーム」との比較です。

メカニクス

コードネーム:E

デクリプト:F

〇プレイヤー役割

コードネーム:チーム内で指令役、受け手側に分かれる(役割固定)

デクリプト:チーム内で指令役が順番に代わる、加えて相手のキーワードを盗聴するという役割

〇コミュニケーションの方向

コードネーム:各々チーム内で出題者→受け手

デクリプト:出題者から相手チームと味方へ同時

〇ダウンタイム

コードネーム:相手ターン中は基本ダウンタイム(特に受け手側)

デクリプト:相手ターン中でも相手のキーワードを予想したり自分が次出すヒントを考えることができる

★デクリプトはダウンタイムが存在しない

〇連想の対象

コードネーム:盤面にめくれてるキーワード数は変化する(減少していく)

デクリプト:1ゲーム中ずっと固定キーワード

★コードネームには盤面が変化する面白み。一方デクリプトはどんどん苦しくなっていく面白さ(相手チームはワードが溜まっていき逆に盗聴しやすくなる面白さ)

〇ヒントを出す時に求められる発想

コードネーム:ターゲットの"共通性"を見出す

デクリプト:キーワードを味方に伝えつつ、盗聴されないためにこれまで出たヒントとの"解離性"を持たせる

〇インタラクション

コードネーム:チームごとに独立しており、チーム間のインタラクションが低い

デクリプト:1つのキーワードで味方に伝えること、相手チームに伝えないことを両立しなくてはならず、インタラクションが高い

★デクリプトではインタラクションが強い分よりチーム対チームという構造が明確化し、盛り上がりに直結する

 

上記の通り、デクリプトはコードネームに比べダウンタイムがなく、チーム間インタラクションが強まった分対立構造がハッキリし盛り上がりやすくなったと考えられます。

 

■コードネームからデクリプトへの変化・深化の結論

 ・「連想系の中でも伝えすぎないことを求められるメカニクス」を採用しゲームとしてジレンマが発生する

・同じ出題(ヒント)でキーワードが分かっている味方にだけ伝えて、何も知らない敵チームには伝えないという非対称で複雑性を持たせている

・各プレイヤーが「ヒントを出す」「ヒントを読み取る」を1ゲーム中にどちらも行うのにプラスして「相手のキーワードを盗聴する」という役割を全員がこなす

・ダウンタイムが実質存在しない

・チーム間インタラクションがあるおかげで盛り上がりやすい

 

■おわりに 

比較する記事はその都合上、比較対象を貶しているように見えてしまうのですが、ディクシットはデクリプトにはない「絵にタイトルをつける」というなんともクリエイティブな楽しみがありますし、コードネームもゲーム中盤面が変化する(→それに応じて出せるヒントも変化する)という楽しみがあります。

なにより、ディクシットもコードネームも、デクリプトよりも敷居が低く万人向けかなと思います。

3つとも本当に面白いゲームです。

コミュニケーションゲームは、人と対面して遊ぶボードゲームならではの楽しみが直接的に味わえますので、今後も是非遊びたいですね!

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