「リプレイ」の先にある景色
■ボードゲーマー二つの流派「ノンリプ派」「リプレイ派」
ボードゲーマーは大きく二つの流派(スタンス)に分かれます。
一つは同じゲームは基本的に1~3回程度遊べば満足し、次々と新しいゲームを開拓していく「ノンリプ派」。
もう一方は、同じゲームを繰り返し繰り返し遊び、多いものでは100回以上遊ぶ「リプレイ派」です。
もちろん、どちらのスタンスかはっきりしない中庸派もいますし、どちらが正しいということも全くございません。
今回は、二つのスタンスのメリットを考え、お互いの魅力を知る機会にしたいと思います。
なお、私はハッキリと「リプレイ派」寄りですので、リプレイの魅力に主眼を置いた記事となります。
■ノンリプ派のメリット
・タイトルを購入することを通じてボードゲーム業界への経済的な貢献ができる
・まだ見ぬ自分に刺さる作品や、埋もれている名作を自分で開拓できる可能性
・様々なボードゲームに対する知見が増える
・幅広い人々と遊ぶことができる
ボードゲーム業界はもちろんボードゲームが売れなければ衰退していきます。そういった意味ではノンリプ派の方はボードゲーム業界の発展に大きく寄与していると言えます。さらに、ボードゲームというものへの敷居を下げ、間口を広げているのもノンリプ派と言えるでしょう。
また、まだ世間に評価されていない名作との出会いの機会が多いのも魅力です。
■リプレイ派のメリット
・経済的な負担が比較的少なく、保管スペースも圧迫されない
・初見プレイ時では気づけなかった魅力に気づける可能性
・ルール読み、インストの手間が少ない
・ボードゲームを媒介とした盤上でのコミュニケーションにより深く(対戦相手やゲームに)触れることができる
リプレイ派は同じタイトルを繰り返し繰り返し遊びますので、タイトルの購入費や保管スペースは節約できます。また、「初見ではイマイチだと思ったけどもう一度遊んでみたらすごく面白かった」という経験がある方も多いのではないでしょうか。
また、先日「「インスト」という行為の狂気 - がりがりボードゲームおかわり」の中でも紹介しましたが、リプレイ派はその狂気の濃度を下げることが可能です。
そして、最後の項目に関しては、少し説明が必要かもしれません。
■盤上での(対戦相手やゲーム自身との)コミュニケーションをより深く
先日、Twitterでボードゲームに関する本の序文に感銘を受けたと、画像を上げてらっしゃる方が居ました。残念ながらメモを取るのを忘れてしまったのですが、概ね「ボードゲームの魅力は何と言っても、盤上で行われる無言のコミュニケーションにある。」といったような内容が記述されていました。
私がボードゲーム、さらにはリプレイを好むのもまさしくこの理由です。
では、将棋などでもよく聞く「盤上での無言のコミュニケーション」とはなんなのでしょうか。
お互いの読み合い・プレイングで牽制し合い、折り合いの付け合いがまるで対話しているかのように見えるのでそう呼ばれています。
でも、そういう風な対話を読み取れるのは指し手と同程度の将棋の実力がある人達だけです。
このように、「盤上での無言のコミュニケーション」が魅力的な理由は、同じゲームをやっている人でしかたどり着けない世界の中で(対戦相手・ゲームと)深く分かり合い繋がる行為であるからだと思います。
将棋と違うところは、ボードゲームは知識や運の要素が入っているものが大半ですので、ゲームとも対話し繋がり合う感覚があります。
■「ゲームに態度で示す」という行為
具体例としてアグリコラを挙げてみます。
最終ラウンドのラスト1手、自分が暫定1位、2位の下家は4点差でラストもう1手残っている。この時、自分が出したい職業はないがあと1マスだけ残っている「職業」を踏みに行く、なんてシチュエーションがあります。
アグリコラをある程度やっている人ならば、「下家のドラフト初手が村長だった場合をケアしているんだな」とわかると思います。これは、"下家"とはもちろんこと、"アグリコラというゲーム"との対話でもあると思います。
この、アグリコラに対して「私は村長を知ってますよ」という態度をプレイングで示し、深く通じ合うことこそが、リプレイを繰り返しそのゲームに対する知見を深めることの魅力であると考えます。
■「ロジカルゲームでクリエイティブだと感じさせられる」
また、世界を股にかけ大活躍するメディアアーティスト・大学教授の落合陽一氏がカードゲーム(マジック・ザ・ギャザリング)について語ってる動画をTwitterで見かけました。この動画は、「ゲームを面白さを興行的に伝えるにはどうすればいいのか」ということを語っている中の一幕であると思われますが、落合陽一氏の語っている内容にもすごく共感できました。
動画ツイートのURL:
https://twitter.com/oga_5648/status/1370325146095939585
上記の動画で落合氏は以下のようなことを語っています。
「かつてマジック・ザ・ギャザリングのオンラインゲームで世界トップ10位くらいになれていた。2~4位は戦っていても勝てる感覚があったが1位の人は本当に強く、クリエイティブだった。ロジカルゲームでクリエイティブだと感じさせられること自体が面白いなと思った。こういうクリエイティブな部分が共有できるようになると野球みたいに楽しめるのになと思う。どうやったらトッププレイヤーの上手さとか美しさを現実世界でみんなと共有できるようになるのか。」
この動画の中で落合氏が語っていることもまさに「同じゲームをやっている人でしかたどり着けない世界の中で(対戦相手・ゲームと)深く分かり合い繋がる行為」の魅力だと思います。
カードゲームをやっていると目の前の盤面に対して手札にあるカードを強く使うことに執着しがちなのですが、本当に上手いプレイヤーは対面デッキとの相性から自分の勝ち筋(プラン)を建て、その実現のために最善を尽くします。私も温存していた手札が勝利の決め手となる瞬間を見た時になんとも美しい、といった感慨に耽る時があります。
■おわりに
以上が私がリプレイを好む理由です。
「アグリコラ」は発売から13年たった今でも戦略が更新され続けています。
もちろん他人に強要するものではありませんが、普段あまりリプレイをしないという方にもその魅力が少しでも伝わればいいなと思います。