がりがりボードゲームおかわり

ボードゲームに関してがメインです。その他雑記。

マンネリする人間関係と「ガムトーク」で生み出される雑談の新規性

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●タイトル:ガムトーク

●デザイナー:角刈書店

●発売:2020年

 

これまでは重ゲーに関することばかり記事にしてきましたが、かなりのコミュニケーションゲーム好きです。

今回はルールを見た瞬間からこれは面白いに違いないと思ったゲーム、

「ガムトーク」をプレイして感じたことを記事にします。

 

■"何故か"回った「黄金体験」

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●タイトル:ゴールドエクスペリエンス~黄金体験~

●デザイナー:エミ ユウスケ

●発売:2016年

 

本題に入る前に「黄金体験」に関する思い出を紹介します。

"~した経験"というお題が親番にだけ隠され、他のプレイヤーに質問をしていきそのお題を当てるという個々人の経験にスポットを当てた水平思考ゲームなのですが、ゲームとして破綻している部分があり、ルールの粗が目に付く作品でした。

親は正解したときに、わかりやすいヒントをくれた子を指名してそこにもポイントが入るシステムなのですが、子はわかりやすいヒントを出そうと思えばかなり直接的なヒントも言えるためそこに対するジレンマが働いていないのです。

しかし、この「黄金体験」は身内でかなりの回数プレイされました。

たびたび書きますが、ボードゲームは本当にタイトルの数がすごいので、一度プレイしたらそれっきりという作品が多いです。

その中で、「黄金体験」が複数回プレイされた理由は、ただ単純にプレイ感が軽いので重ゲーと重ゲーの間のブレイクタイムにちょうどいいというだけではないと思います。

ゲームを通じて目の前にいる人の今まで知らなかった一面を知ること、伝えることでコミュニケーションの根源的な喜びそこにあったからだと思います。

 

■自分の中にあるトークの棚

人間というのは楽をしたがる生き物です。

それは普段のコミュニケーション、雑談においてもそうで、生きていく中で「こういう状況ではこの話をすればいい」「こういう話題が来たらこう返せばいい」というテンプレートのようなものが自分の中に溜まっていきます。それはまるで自分の中にトークの棚があり、そこから状況に応じてトークを取り出すようなイメージです。

普段はしない話をする、というのは意識的にならないとそうできないものなのです。

気がつけば同じようなやりとりを何度も何度も型が決まっている演舞のように繰り返してしまいます。

このトークの棚は社会の中で「まともに見えるように振る舞う」為には必要なことではありますが、本質的なコミュニケーションとは少しズレる気がしますし、人間関係に生じるマンネリ感の一因になっていると考えられます。

 

■人間の多面性を露わにする、という優しさ

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話題を「ガムトーク」に戻します。

「ガムトーク」は「黄金体験」からゲームの部分を削ぎ落したような作品です。

ボードゲームというより、コミュニケーションツールと分類した方が正しいかも知れません。)

親番は提示された話題に対してのトークをし、子はそれを聞いたあと「ええ話や~」とリアクションする、それだけです。(トークにオチがなくてもOK)

もちろん、綺麗に話せた話(棚から出した話)からでもその人の新たな一面が見えることもあるでしょうが、お題は360個ありますので、かなりニッチな話題もあります。出るお題すべてに整ったエピソードトークや自らの考えも話すのは難しいです。

そんな苦しいお題にも、なんとか話を捻りだすことができるのは、話を聞いてもらえる時間が確保されてる・聞いた後は「ええ話や~」と言ってもらえるルールの秀逸さだと思います。

苦しいお題のその中から捻りだされた話にも、(話者の中にあるトークの棚の外にあるので)今まで知ることのなかったその人の一面を垣間見ることができます。

普段の雑談が如何に限られた話題でのみ行われているか、と自覚的になれるこの感覚は是非味わってほしいです。

コミュニケーションツールというと、なんとなく初対面での話題作りがその役割に思えますが、このゲームは是非とも普段一緒にいる人と遊んでこそ真価が見れると思います。

また、このゲームで話した話題は自分の中の「一度話した話題の棚」に入るので、自分の中の「トークの棚」を拡張することにも繋がるので、普段の雑談の幅を広げることにも使えます。 

ただ、このゲームの素晴らしさはそのような小手先のコミュニケーションを円滑にすることのその先にあると思います。

「他人」という存在が如何に複雑で多面で面白いのか、「自分」という存在はこんなにも伝えきってない奥深いものなのか、ということを感じることができるこのゲームに人間賛歌とも言えます。

人間の多様性に寛容になる(ステレオタイプにハマらない様になる)、そんな優しさがこのゲームにはあると思います。

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