【雑記】クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園を観て、ボードゲームも「青春」だなと思った話
■クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園を観ました
先日、「クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園」を観ました。
「オトナ帝国の逆襲」や「アッパレ!戦国大合戦」など名作揃いクレヨンしんちゃん映画ですが、今回は「逆襲のロボとーちゃん」でも監督を務めた高橋渉監督作品ということもあり、期待して観に行きました。結果、ギャグシーン(特にまさお君絡み)が個人的な好みに合致し非常に楽しめましたし、ラストシーンでは涙が溢れました。
面白いギャグやシーン、「どうせこの人が犯人なんでしょ」を裏切るミステリー要素など個別個別でいいところもありますが、なんといっても全体的なテーマの設定が時代を切り取っており、そういう感覚が素晴らしいなと思いました。
私が感じた今回のクレしん映画のテーマは「効率化社会と"無駄"の価値」でした。
本作ではAIによって管理され、学内での行いや実績によって数値で評価・階級分けされるエリート学校「私立天下統一カスカベ学園」の様子が描かれます。
テストでいい成績を取ったりスポーツや芸術の分野で活躍が認められれば加点、逆にテストの成績が悪かったり喧嘩をしたり風紀を乱すようなお下品な発言がある場合は減点です。非常に効率的な管理社会です。
そういった学校の制度により暴走してしまった「犯人」と対決する際に、しんのすけ達の原動力となったのが評価制度の中では無駄とされてしまい削ぎ落されがちな「青春」の力でした。
「効率を極めた社会の危うさ」("非効率""無駄"なものにあるいまだ数値化できないものの大切さ)が描かれていると思いました。
■限界費用ゼロ社会とは
限界費用ゼロ社会はご存知でしょうか?
いま、経済パラダイムの大転換が進行しつつある。その原動力になっているのがIoT(モノのインターネット)だ。IoTはコミュニケーション、エネルギー、輸送の“インテリジェント・インフラ”を形成し、効率性や生産性を極限まで高める。それによりモノやサービスを1つ追加で生み出すコスト(限界費用)は限りなくゼロに近づき、将来モノやサービスは無料になり、企業の利益は消失して、資本主義は衰退を免れないという。代わりに台頭してくるのが、共有型経済だ。人々が協働でモノやサービスを生産し、共有し、管理する新しい社会が21世紀に実現する。
『限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭』-ジェレミー・リフキン (著), 柴田裕之 (翻訳)のAmazon商品紹介ページより引用
要は、「技術がものすごく発達することによりあらゆるモノ・サービスが無料で利用できるようになる社会」といった感じでしょうか。
身近な例で言うと、今まで音声で通話する際は時間単位で電話料金がかかっていました。しかし、今ではZoomやGoogle Meetを使えば高品質なビデオ通話を無料で利用できます。
また、「自分の思ったことを文字で情報発信したい」となった場合、一昔前なら自費出版や投稿といった手段が必要でしたが、今ならSNS、ブログなどで簡単かつ無料であっという間に実現できます。
資本主義は競争により技術開発・効率化・コストダウンを繰り返していき、その結果として皮肉にも利益を追求できなくなった資本主義が存続できなくなる社会が到来するというのが、限界費用ゼロ社会です。
現状、資本主義が衰える気配はありませんが消費者として見てみると世の中がより便利になっていっているように感じます。逆に労働者として見ると、より複雑で捉えどころのない社会になっているようにも見えます。
■マッチングアプリの例
一昔前は「出会い系」と聞けば少し穿った見方をするのが一般的でしたが、現在は「マッチングアプリ」と名前を変えすっかり市民権を得るようになりました。身近なところでも利用者は多数います。
これも「IoT技術の発展により、今までのパートナーを見つける際の限界費用が下がった」と言うことができると思います。
今までのように所属しているコミュニティや知り合いからの紹介など限られた範囲からパートナー候補を選んで恋愛関係になっていたのと比べると、最初から恋愛関係を求めている人達の中で年齢・趣味・居住地などでマッチングするのはとても効率的だと言えます。
ただ、その際に削ぎ落ちる「何か」の存在を感じるような気もします。
学校や職場で偶然知り合い、触れ合っていくうちに気になり始め、アプローチをして恋愛関係に発展する……そういったプロセスにある「ときめき」のような非効率的なものがマッチングアプリでは削ぎ落される、そんな気もします。
(もちろん、マッチングアプリが良くない、といった旨の主張ではなく、従来のプロセスには確かに非効率的だが「何か」がある、という意味です。)
■ボードゲームの非効率性
この視点は、ボードゲームにも通じるところがあると思います。
デジタルゲームと比べると、準備や手間が必要だし、手順ミスやルール間違いも頻発します。それをまとめたのが下記の記事です。
この記事の中でも、その「何か」の正体を完全に解き明かすことはできていません。
効率だけでは語れない青春的な「何か」の存在が、ボードゲームの根源であると思わずにはいられません。
■おわりに
最近は日々の暮らしの中でも「最大効率化された社会における幸せ」を考えることが増えました。そんな中、バシッとそのテーマで作品を提示してくるクレヨンしんちゃん映画に痺れました。
「クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園」は興行的にも過去のクレしん映画で最高収入ペースとなっているらしいので、多くの人と共有し楽しめるかと思いますので、皆さんも是非ご覧になってください。