がりがりボードゲームおかわり

ボードゲームに関してがメインです。その他雑記。

「ナヴェガドール」と「ハラータウ」と「バラージ」から考えるインタラクションへの向き合い方

初めまして。がりがりと申します。

1年半ほど前からボードゲームにハマっております。

YouTubeボードゲームの動画をアップしているので、よろしければそちらも見ていただけると嬉しいです。

www.youtube.com

完全なるリプレイ派で、1つのゲームをやり込むのが好きです。

ほぼ毎週末ボードゲーム遊んでいるのですが、その中で感じたことなどを文章として記録しておけたらなと思います。

今回は、最近ナヴェガドールを初めてプレイして感じたことを記事にします。

 

■ナヴェガドールに感じた違和感

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皆さん、ナヴェガドールをご存知でしょうか?

ナヴェガドールとはコンコルディアで有名なマック・ゲルツが2010年に発売したゲームです。

つまり、今より10年以上前の作品です。

 

僕は、今月初めてナヴェガドールをプレイしました。

この時プレイヤーの全員が、コンコルディアはプレイしたことあるがナヴェガドールは初プレイでした。

 

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シンプルで洗礼されたシステム、プレイヤー各々の勝利点がオープンになっているため誰が勝っているかわかりやすく、最近のゲームにはないストレートなインタラクションに僕を含め普段一緒に遊んでいるメンバー全員が絶賛。

すっかりと虜になってしまい2回、3回、4回……と複数回遊びました。

 

すると面白いのは間違いないのですが、数をこなしていくうちに最近のゲームにはない以下のような違和感を覚えました。

 

①ランダム要素が植民地タイルの金額だけなので、序盤毎回似たような展開になりがち。

②インタラクションが強いが故、周りの動向に左右されすぎる。定石が定めずらい。ゲーム全体が掴みどころがない。

→自分が上達してる感(自己成長)が感じられない。

③勝利点がオープンになっているため、1位を叩く必要がある。ただ、一人で叩いても自分の動きが弱くなり自分が凹むだけなので、複数人で叩く必要がある。そうしないプレイヤーがいた場合や、叩いてる間に新たなトップ目が生まれた場合にうまく切り替えないと、キングメーカーとなる可能性がある。

→経験者の中に初プレイ者が交えるとゲーム全体が成立しない可能性がある(初プレイ者が勝者を決めうる)

 

ボードゲーム環境の変化

特に、③には時代の流れを感じました。

2010年時点に比べれば現在はボードゲーム人口も増えているでしょうし、間違いなく言えるのはボードゲームのタイトルはその時の何倍にもなっているということです。

人口が増えてオープン会など見ず知らずの人と一緒に遊ぶ機会が増えることにより、経験者と初見者が混じってもゲームが成立すること(経験者が勝つのは問題ないが、初見者が勝者を選ぶ形はNG)が良いゲームの条件となっているでしょう。

また、タイトルが増えているということは単純に一つのボードゲームにかけれる時間が減っており大半のゲームは一度プレイしたっきりになりがちです。

 

■最新タイトル ハラータウ

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ナヴェガドールと同じく、今月初プレイしたゲームとして「ハラータウ」があります。

「ハラータウ」は先月末(2020年12月)に天才ゲームデザイナーウヴェ・ローゼンベルク氏が発売した出来立てほやほやの新作です。

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こちらの作品もものすごく面白いのですが、「ナヴェガドール」と正反対のような作品でした。

インタラクションがかなり薄く、1~4人で遊べるゲームながら2人ベストなのでは?という声も強いです。

インタラクションはワーカープレイスメントの部分だけなのですが、1つのアクションに対して3つのアクションスペースが確保されていたり、類似アクションが複数用意されてたりと、大事故(アグリコラでいう改築事故、柵事故)が起きにくい作りになっており、かなり優しいゲームです。
そして、ナヴェガドールをプレイした時に感じた違和感には完璧に回答しているとも言えます。

 

①ランダム要素が植民地タイルの金額だけなので、序盤毎回似たような展開になりがち。

毎回異なるカードが配られるため、全く同じ展開はほぼ存在しない。

 

②インタラクションが強いが故、周りの動向に左右されすぎる。定石が定めずらい。ゲーム全体が掴みどころがない。

→自分が上達してる感(自己成長)が感じられない。

工具の取り方など、ある程度定石は存在する。また、カードの山引き運に大きく左右されるため、うまくいかなかったとしても(他のプレイヤーのせいではなく)運のせい、と割り切れる。

 

③勝利点がオープンになっているため、1位を叩く必要がある。ただ、一人で叩いても自分の動きが弱くなり自分が凹むだけなので、複数人で叩く必要がある。そうしないプレイヤーがいた場合や、叩いてる間に新たなトップ目が生まれた場合にうまく切り替えないと、キングメーカーとなる可能性がある。

→経験者の中に初プレイ者が交えるとゲーム全体が成立しない可能性がある(初プレイ者が勝者を決めうる)

手札が非公開のため誰が勝っているかは完璧にはわからない。おおよそ調子が良いプレイヤーがわかったとしても邪魔が難しい。

また、手札が非公開のため、他の人のベストなプレイはわからない。

→他の人のベストの動きを想定して動くことが不可能(→そうしなくても良い)

→目に見えたキングメーカー発生しにくい。

 

ハラータウは誰でも遊びやすく、取っつきやすいゲームです。

経験者と非経験者が混じっても全く問題がありません。

キングメーカー問題もかなり起きにくいつくりになってます。(さらには、ゲーム終了後、プレイヤー同士それほど結果順位を気にしないような雰囲気が産まれる節さえあります。)

ですが、プレイヤー各々がソロプレイをしているかのような物足りなさを感じるのも事実かと思います。

このように、ナヴェガドールのような強いインタラクションと、ハラータウのような遊びやすさは相反するものであると考えられます。

 

■インタラクションと自己成長の両立 バラージ

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最近、僕がドはまりしているボードゲームがバラージです。

バラージも比較的新しく、2019年の作品です。

この作品は、インタラクションの強さを保ちつつ、プレイヤーの上達も実感させる(他のプレイヤーの動向に左右され過ぎない)ゲームシステムが素晴らしいと思いました。

このゲームは、大まかに分けて3層から成り立っていると考えられます。

 

A インタラクション:メインボード(盤面)

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ゲームのテーマでもある水の奪い合いによる発電が行われるメインボードはインタラクションバチバチです。 

調子よく発電できそうな他人のダムの川上に自分のダムを建てたり、中立ダムへの導管を先取りして他のプレイヤーに使ってもらったりと他人の動向をしっかり観察して立ち回る必要があります。

発電する際は、Bのアクションスペースを踏む必要がありますし、建築物を建てる際はCの個人ボードを使います。

 

B インタラクション:共通アクションスペース

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共通アクションスペースは、ワーカープレイスメントです。

ワーカープレイスメントなので当然インタラクションは発生しますが、いずれのアクションにも強弱がついた複数のスペースが確保されているため意図したアクションが全くできなくなることはあまりありません。

ですので、メインボードに比べインタラクションは低めです。

Aで強い発電をするためのスペースや発電の目的となる契約タイルで強いもの(例えば、報酬で建築できるもの)、Cで強く建築するための1枚ずつしか存在しない上級技術タイルは優先度が高いです。

また、契約タイル・上級技術タイルには強弱が割とハッキリついており、その知識を習得することが勝利に繋がります。(自己成長を感じられる部分)

 

C インタラクション:個人ボード

 

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個人ボードには4つの建設スペースがあり、自分専用のスペースであるため、このボード自体にインタラクションはありません。

建設を進めていくとテラミスティカのように定期ボーナスが解禁されるシステムが採用されており、これをメインの得点源にして勝利することもできます。

建設先はもちろんAです。建設メインで進めていく場合も、どこに建築物を置くか強いインタラクションの中での判断が求められます。また、建設コストが安い導管なども早取りの対象となります。

強く建築を進めるために必要な上級技術タイルで強力なものはBのアクションスペースで他プレイヤーと取り合いになります。

 

上記のように、A、B、Cというインタラクションが異なる3つのボードが有機的に噛み合って一つのゲームとして成立させ「面白い」と感じさせるゲーム調整のバランス感覚は神業と言ってよいのではないでしょうか。

この3つのボードがあるからこそ、プレイ中、プレイ後に感じる目の前の人と同じゲームを楽しんだという(インタラクションがあるがゆえの)満足感と、以前よりも(周りのプレイヤーに左右され過ぎず)うまく出来たという自己成長を味わえるのだと思います。

さらに、国家×重役、目的タイル、ボーナスタイル、中立ダム、契約タイル、上級技術タイル、(外注タイル)、(私有建築物)など可変要素がこれでもかと詰め込まれており、リプレイ性も高いです。

 

■結論

・ナヴェガドールはプレイヤー同士の行動が干渉しあい、ゲーム性が高い名作。複数人で将棋やチェスのようなゲームをやっているような硬派なゲーム。

→しかし、タイトルが溢れ返りボードゲームと一期一会のような現代の環境にはマッチしにくい。

 

・ハラータウはそんな時代のニーズにマッチした素晴らしい作品。

→インタラクションは緩やかなワーカープレイスメントのみ。カード運の要素が強く、若干の物足りなさを感じる。

 

・バラージはインタラクションの強さを保ちつつ、インタラクションを強くした時生じる現在のボードゲーム環境では致命的となり得る弊害(キングメーカー問題、周りに左右されすぎる、掴み所のなさ)を出来る限り解消した傑作。

 

■ちなみに

この視点で他の名作を見てみると

・ナヴェガドール

→メインボード(インタラクション強)

☆この中メインボードの中に市場、建築物、盤面、恩恵など個別のスペースがあり、それらが絡み合っている。

 

・ハラーハウ

→共通アクションスペース(インタラクション中)+個人ボード(インタラクション弱)+手札(インタラクションなし)

☆手札は山引ガチャ。

 

マルコポーロの旅路

→メインボード(インタラクション弱)+共通アクションスペース(インタラクション強)

☆キャラ能力によるリプレイ性の担保。

 

アグリコラ

→個人ボード(インタラクション弱)+共通アクションスペース(インタラクション強)+手札(インタラクションなし)

☆予備スペースの救済が無いワーカープレイスメント。ドラフトルール採用時は、手札にもインタラクション。

 

・モンバサ

→メインボード(インタラクション強)+共通アクションスペース(インタラクション強)+個人ボードの簿記トラック、ダイアモンドトラック(インタラクションなし)

☆メインボードが終盤に激しく動くためプレイ時に感じるインタラクションは強め(キングメーカーは起きやすい)。簿記トラック、ダイアモンドトラックの独立性がかなり高い。

 

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